どいの父ちゃんのブログ

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モーツァルトのピアノ協奏曲 その4


第24番(K.491)

一番好きな曲はなに?…って考えるのは、あんまり意味がないですが、楽しいですね。
モーツァルトのピアノ協奏曲では「24番」が間違いなくベスト2に入ります。
(もう1曲は、その時々で変化する、ということで…)

第1楽章は…
短調ならではの深刻な雰囲気で始まります。これは、一幕の「悲劇」です。
しかし「悲劇いってん張り」ではなくて、幸福な時間のある。
最後は、壮大なドラマが閉じるように終わります。
これは第1楽章ではなくて、まるでフィナーレのようです。

第2楽章は…
一転、柔らかく優しくけがれを知らない(…と、言うよりけがれを自然に拒絶する)旋律。
秘密の聖なる森で暮らす美しい人の「愛の成就」を、取り巻きの小妖精たちが静かに祝福するような曲。
だけど、その「愛の成就」は、多分、命とひきかえにして成し遂げられる幸福の気配…
エンディングは、その哀しい痛みを伴う幸福に向かって、凛として歩む主人公と、それを介添えして行進する妖精たちの後ろ姿が見えるよう。
今回、聴きなおして、涙がでました。

第3楽章は…
またしても深刻な雰囲気に戻りますが、この深刻さは柔らかい。
第1楽章の「悲劇」が映像的なら、この楽章の「悲劇」は、人が物語る文学的な悲劇かも。
父ちゃんにとって、最近24番で一番すきなのは、この第3楽章なのです。

父ちゃんが所有している音盤は、以下の2枚です。
イメージ 1
内田光子/ジェフリー・テイト イギリス室内管弦楽団(1988年録音)
・アンネローゼ・シュミット/クルト・マズア ドレスデンフィル(1972年録音)

あと、先日N兄から借りたコレ(全集BOXから)
イメージ 2
ダニエル・バレンボイム弾き振り/イギリス室内管弦楽団(1973年録音)

これらの演奏を、昨夜聴き比べてみました。
第24番は(「も」ですが、この曲は特に)、各楽章がそれぞれ素晴らしく、3枚の音盤も、やはりそれぞれヨカッタ。
イメージ 3
第1楽章は「バレンボイム盤」
フィジカル・メンタルともに「体力がある」、というのでしょうか。
オーケストラとバレンボイムのピアノは、この「悲劇」を大きな呼吸をしながら演奏する。
全体を通しての「悲劇」と、中盤の「幸福な時間」とのコントラストが素晴らしくて、物語に大きなスケールと深みがある。
内田さん、シュミットさんの演奏は、これに比べると「息をつめて」演奏しているみたい。
バレンボイムさんの「カデンツァ」は、とても個性的に感じました。

第2楽章は「内田さん」
内田さんのは、他の二人に比べてなんとも柔らかい雰囲気。
秘密の森に、ベールのような靄がかかります。
バレンボイムさんの演奏では、主人公は「美少女」風で、内田さんのは「女性的な妖精」のような感じ。
オーケストラを含めた音の透明感はバレンボイムさんが素敵ですが、
最後の「残酷で清浄な幸福に向かう行進」の表現は、内田/テイトが好き…(^^ゞ
アンネローゼさんの第2楽章は、ちょっとロマンチックさに欠けるような…
まぁ、そこがこの女性(アンネさん)の魅力でもある…

第3楽章は「アンネローゼ・シュミットさん」
この曲を締める最終楽章。
印象的な旋律にのって、シュミットさんの感情前回の演奏が展開します。
彼女の「思い」と「テクニック」と、マズアさん率いるオケの「息(意気)」がピッタリとあって、美しく緊張感あふれる「悲劇」が現れてきます。
この楽章のエンディング近く、ピアノを「ポロロン」と4連譜で弾くところが2か所あるのですが、シュミットさんはここを絶妙の「半弱音」で弾く。
100%近い全開演奏の中での「弱音」が、聴く者(ワタシ)の心に「ひゅっ」と沁みます。
バレンボイムさん、内田さんの第3楽章は、これに比べると、やや弛緩した感じがする。
アンネローゼさんの「ツンデれ」魅力が匂い立つ演奏。ワタシにとって、これはスゴイ名園です。

ふ~。今日は24番だけで終りにします。