心待ちにしてた映画「きみの色」。もう一度観たかったが、機会がないまま3週間で上映終了となった。再鑑賞は”円盤化”の後になりそう。以下は「余熱」で書いてみる。一度観たきりなので、記憶違いがあるかも知れない…。ト, イイワケ
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高校生のトツ子、きみ、ルイ3人が主人公。
トツ子はミッションスクールの生徒。校内の教会に熱心に通い次のように祈る。
「神さま、変えることのできないものを受け入れる力をお与えください。」
…先が続かないトツ子。居合わせたシスター日吉子(怖い程に清楚で美しい修道女)が続ける。「…変えるべきものを変える勇気を、そして変えられないものと変えるべきものを区別できる賢さをお与えください。」物語は、この祈り(『二ーバーの祈り』というそうだ)の文言どおりだと思う。
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トツ子は親元を離れて寮で暮らている。幼さがあり乗り物酔いする純粋な少女である。シスター日吉子はその純粋さを愛し、見守っているように見える。
トツ子は入学前、母親が経営するスクールでバレエを習っていた。「ジゼル」を踊ることが夢だったが、挫折してしまった。トツ子は自信を失っていた。ぽっちゃりした体形へのコンプレックスもあったかも…。
或る日、トツ子は学校の廊下で初めてきみを見かける。きみは、美しいアトモスフィア(トツ子にはそれが青色にみえる)をその身に纏っている。トツ子は魅入られて探し回るが、きみは姿を消す。諦めきれないトツ子。「きみちゃんは本屋さんで働いてるらしい」とのウワサを聞いて町中の本屋を探し歩き、路地の奥の、古い本やレコードを扱う「しろねこ堂」できみを見つける。
きみは人気者だったが、退学した。そのことを二人暮らしの祖母に隠している。祖母はきみとトツ子の学校の聖歌隊でならした先輩でもある。きみの退学理由は劇中では示されないが、映画を見終えた今は、異性交際を禁じる校則が示す厳格さへの静かで幼い反抗のように思える。きみは、退学を隠していること(祖母へのウソ)に罪悪感を持っている。
きみはエレキギターを弾く。兄が置いていった黒のリッケンバッカー。トツ子が見つけた時のきみは、しろねこ堂の店番をしながらギターの練習をしていたのだった(あまり上手くない)。
ルイは離島の医院の一人息子である。医師の母親と二人で暮らしている。時々、連絡船に乗って町に出る。彼には兄が居たが今は不在。死別か生別かはわからない。母親は「島で唯一の医院を継ぐのはあなたしかいない」と言い、ルイもそのつもりでいる。医学部の受験勉強をする時間を割いて、彼は大好きな音楽活動を続けていた。音楽無しにはいられないことは母親に隠していた。
ルイはとても穏やかで中性的である。キーボードやテルミンを弾きこなす孤独な音楽青年だった。
トツ子ときみが話しをしているしろねこ堂に、レコードを探しにルイがやってくる。本棚のすき間からその姿が見えて、きみはルイに気づいている(ルイが、前から気になっている気配)。彼は、談笑するきみとトツ子に「音楽をされるんですか?」と尋ねる。トツ子は思わず「よかったら、私たちのバンドに入りませんか?」と言う。3人のバンド活動が始まる。スマホで連絡を取り合う3人。
或る日、トツ子は教会でシスター日吉子に助言を受ける。「心のうちを歌にしてみたらどうでしょう」。トツ子はきみを太陽に、自分を惑星にみたてて「水金地火木土天アーメン」を作り、きみとルイと共有する。刺激を受けたきみとルイも、自分の思いを歌にする。
祖母へのウソ(自主退学)に悩みを深めながら通学を装うきみに、修学旅行の日程が迫る。嘘をつきとおすためには2日間の外泊をしなくてはならない。きみはトツ子に事情を打ち明ける。トツ子は仮病を使って修学旅行を休み、きみを修学旅行中無人の寮の部屋(4人部屋)にかくまうことにする。お菓子を食べながら語り合い心を開くトツ子ときみ。夜、話声を聞いたシスター日吉子と寮母が部屋を訪れる。トツ子はあわててきみを隠す。その時トツ子は、木製のベッドの手すりに「God Almighty(全能の神)」と彫らしれた文字を見つける。きみはトツ子との交流で勇気を得て、自身の退学を祖母に打ち明けることを決意する。
トツ子ときみは、ルイが住む離島を訪ねる。ルイは自宅近くの古い木造教会を居所にして音楽を楽しんでいる。3人は教会で練習を楽しむ。そんな週末が何度か過ぎる。
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長くなっちゃった。疲れてきたし。後日、書き足すかもしれないけど、結末のとこ。
3人はミッションスクールの学園祭でコンサートをします。それぞれのオリジナル曲を携えて。そして、春がきてルイは卒業し、大学に行くため島を離れます。トツ子ときみは島を去るルイを見送ります。
嘘と罪悪感を共有する思春期の若者の、静かな、美しい、ハッピーエンドのお話です。もう一度観たい。
今年は「ルックバック」という物凄い作品もあって、とにかく凄い年。